2019年に東京富士美術館にて実施した国際治験A-Health「美術館における参加型アートプログラムが日本の在宅高齢者の健康に与える影響:比較ランダム試験の結果」が発表されました。
アートリップ〜対話型アート鑑賞〜

2019年に東京富士美術館にて実施した国際治験A-Health「美術館における参加型アートプログラムが日本の在宅高齢者の健康に与える影響:比較ランダム試験の結果」が発表されました。

  •  アーツアライブは2019年カナダのマギル大学教授のDr. Olivier Beauchetの呼びかけに応じて、「美術館における参加型アートプログラムへの参加が在宅高齢者のQOLやウェルビーイング、心身の健康に及ぼす影響についての比較ランダム国際治験 A-Health」を実施しました。 その治験の結果がこの度、Frontiers in Medicine 誌に発表されました。オープンアクセスなので、誰でも閲覧可能です。
      日本の美術館における創造的参加型プログラムが在宅高齢者のQOLと健康に与える影響について査読論文として初めて発表されたRCT(比較ランダム試験)であり、これから日本で美術館における社会処方の可能性等を実現するための一助となればと参画したものです。初めて海外の査読論文にその成果が認められました。

    A-Helath は、同様の治験をカナダのモントリオール美術館で実施した結果を受けて、治験の母数を増やすべく共通のプロトコールを使用している国際治験です。東京での実施は、世界でモントリオール美術館に続き、2番目の治験になります。 様々な美術館に実施協力をお願いした結果、東京八王子の東京富士美術館が趣旨に賛同して、プログラムの実施先となりました。担当学芸員の平谷さんには本当にお世話になりました。オリンピックの前年の年でもあり、どの美術館もイベントで目白押しの中実施可能な時期は5月から8月の3か月間に限られましたが、今思うとそのあと、コロナ禍で多くの美術館か閉鎖されたりしたので、あの時に実施して正解でした。 SNSや雑誌の記事を通して広く参加者を募集し。合計73名の在宅高齢者の方々が同意書に署名の上、治験に参加してくださいました。(応募人数から途中棄権や参加辞退された方を除いた人数)

    RCT比較ランダム というのは、薬等の治験でも採用される、同じ条件かの参加者をランダムに半分に分けて、半数は、治験対象のプログラムに参加し、残りの半分は、プログラムに参加せず、同じ時期に同じ検査を受けてもらい結果を比較するという意味です。結果ランダムに分けられた36名の方が毎週東京富士美術館に通い、2時間のアート創作ワークショップやアートリップ(対話型鑑賞事業)に参加され。プログラムに参加しない37名を加えた73名がオンラインによるQOLやウェルビーンぐグ、フレイル(虚弱)に関するオンラインテストを毎週受けました。

     治験の結果)
    治験では、QOL(EQ-5D)、CESAMフレイル(マギル大学考案の虚弱指数)、ワーウィック・エジンバラウェルビーング指数(WEMWBS)が効果の測定に使用されました。
    先ず、アート参加グループの平均QOLが著しく向上しました。 彼らの身体のフレイルに関しては、アートに参加したグループのフレイルに対する効果は混合の結果でした。しかし、アート参加者グループだけを見るとプログラム参加前とプログラム参加後3か月後の比較をするとアート参加グループには、フレイル(虚弱)の減少効果が見られました。元々アート参加グループのフレイル(虚弱)度が アートに参加しないグループの平均よりも低かったことを考慮するとアートのグループにフレイル改善兆候が見られた、という結果になります。 最後のウェルビーイングに関しては、アート参加グループと参加しないグループで全く差異が見られませんでした。

    QOLに著しい向上がありながらウェルビーイングに関しては変化が見られなかったことについては、QOL(生活の質)指数とウェルビーイング指数はいずれも心の健康を測定するものでありながら、QOLが外部的要因に関する自己の認識を表すのに対して、英国で開発され、世界的に汎用されているWEMWBSウェルビーイング指数は、14項目の質問からなりそれに回答する形でウェルビーイング(日本では幸福度と訳されることも多い)を図るのですが、何をもって幸福とみなすかは文化的背景よっても異なります。日本の特に高齢者の幸福感は、英国のそれとは必ずしも一致しないことも理由に挙げられると考察します。例えば、ウェルビーイング指数には、自分が役に立つ人間だと感じるとか、自分に満足している。自分に自信がある。など、自立と自己肯定感に関する質問が多いがこれらは必ずしも日本の高齢者の幸福感には関係しないのではないか。よって、アートに参加したグループのウェルビーイングが、そうでないグループに比較して数値として現れていないのではないか。 とも考えられないだろうか。

    ちなみに、アートに参加した人々の参加率はたかく、満足度も高く、彼らの希望でお別れ会まで開催したほとである。
    参考までに、アートに参加したグループのアンケート結果のリンクも添付いたします。(おかげ様で全般に対して高い満足度の評価をいただきました)

    論文(英文)

    日本語版翻訳

    アンケート結果

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