美術館10館の担当学芸員によるアートリップ実施の振り返り会(日本財団助成)
スタッフダイアリー

美術館10館の担当学芸員によるアートリップ実施の振り返り会(日本財団助成)

3月30日(金)13時より国立新美術館の研修室ABにて 今回アートリップと講演会を実施した美術館の担当学芸員が集まり、
それぞれの館におけるアートリップの実際と、良かったこと、今後の課題について6分間のプレゼンテーション(一部)をしていただき、
2部で、あらかじめお願いしたアンケート(以下)に基づいて継続に関しての課題についてのディスカッションを17時まで行いました。

1)振り返り会の為の事前アンケートにおいて全ての会がプログラムの継続の重用性を指摘しており、既に継続実施している美術館の事例を求めていた。
そこで、2018年より6年継続実施している山梨県立美術館に事前に紙面により継続実施の経緯、実施形態(アートコンダクターなど)、
今後の課題についての聞き取り調査を行い、冒頭に回答を共有しました。

振り返り会で他館の取り組みを知れたこと、また課題を共有できたこと。何より、おなじ試みをしている学芸員が実際に会って交流できたことが基調な体験だったとの感想を頂きました。
また、見学された他館の学芸員の方からも、「多くの館の意欲的な取り組みや、持続するための問題点など、率直な意見交換を聴くことができ、大変勉強になった。
それぞれの状況に合ったモデルを構築していく必要性を感じた。」
と高い評価を頂きました。

これを機会に実施館同志の情報共有が進み、継続に向けてお互い切磋琢磨できるように今後もネットワークを活かしていきたいとおもいました。

他に以下の指摘や課題が提起されました

◎集客の課題
アートリップを一度体験すれば、その魅力を実感してもらえるのだが、
→美術館に認知症当事者あるいは高齢者を連れ出すことはなかなか難しい。
→美術館や作品鑑賞に対する「難しい」「ハードルが高い」といったイメージや、
鑑賞プログラムそのものに対するイメージがわかないことも一因か。

◎継続していることへの効果・影響
・新聞、テレビ局の取材を受けるようになった。
→アートリップのような鑑賞方法があること、またそれを展示室で行っていることを知ってもらう機会は増えた。
・多くの参加者を募るため、令和5 年度からは認知症の方に限らない高齢者(65歳
以上)も対象とする。

◎継続実施の館内外の評価について
・参加者へのアンケートでは、90%を越える割合でプログラム内容を「満足」と評価(5 段階評価、4 以上の割合)。

2部の振り返り会/意見交換
◉今年度の実施館から課題についての意見交換
◎次年度の継続について/「ゆるやかに」実施を検討。より多様な対象への連携先などの調査と先進事例を調査予定。既存の事業の枠組みで実施。
◎予算について/アートコンダクターの謝金をどう調整するか。既存の事業の一部をして実施。
◎今後の継続について/
・館長の継続決定があれば、継続可能。
・有償化での継続は東京では可能であるが、地方の公立館では有償化は困難。

◎アートリップの実施継続について のパターン
➀参加者自己負担型(アーツアライブ主催・国立西洋美術館2012年~2020年)
・初年度は経産省の補助金事業/入場料減免・参加者8名+アートコンダクターの9
名 アートコンダクターと他のスタッフ謝金はアーツアライブが負担
・次年度以降 都内美術館にて参加者から参加費徴収/入場料減免・参加者+アーコ
ンダクター、スタッフ・認定アートコンダクターが実施
・参加者募集から当日運営までアーツアライブ担当、美術館は協力(美術館に事業報告書と収支計算書を毎年提出、美術館年報に協力イベントとして掲載)

➁美術館主催型
・美術館が助成金などで実施(山梨県立美術館他)
→地域の認定アートコンダクターが実施
→認定アートコンダクター謝金は助成金より

➂今後の可能性として
・費用支援先(予算・寄付など)として/地域企業・商工会議所・教育委員会・自治体の高齢者福祉課・ロータリークラブ・ライオンズクラブ等 
・地域の認定アートコンダクターの活用

◎募集方法について/
・情報が届いて欲しい方へなかなかリーチできない、より効果的な方法があるのか。
→行政の高齢課、福祉課、地域包括支援センター、認知症の人と家族の会、地域の支援団体、オレンジカフェなどへの定期的なアプローチが必須
・前年度参加された方が入院されるなど、参加者の体調面での厳しさ。
・交通移動手段/高齢者施設の方の移動手段と介護者などの問題。
→高齢課との連携(施設から美術館への送迎と介護)

◎認知症の表記について/
・まだ認知症ではない高齢者の方は、認知症と表記することに抵抗感・拒否感があるので「ご高齢の方のための脳活」などの表現で、認知症予防として関心が高まるのではないか。
・認知症と表記した場合、家族への参加を促す効果がある「認知症でも美術館に行ける」。

◎学芸員のアートコンダクター養成講座受講について/
・学芸員が受講する場合、館から交通費のみ支給の可能性あり。但し、受講料は個人負担のため、初級講座(2日間/63,800円)までは何とか負担できても、中級講座(4日間/220,000円)は厳しい。
→何らかの補助金、助成金が必要。
→国の事業での子どもの鑑賞プログラム研修事業(3日間集中/全国の学芸員、教員
などが対象)のようなものがあれば受講しやすくなり、より広く早く普及することが可能ではないか(子どもの鑑賞プログラムが全国にこれだけ普及したことが証左)。
→対象を美大生や、福祉、医療関係の学生にもすることも可能ではないか。

最後にアーツアライブの林より、アートコンダクターについての説明があった。

◎アートコンダクターについて(アーツアライブ)
アートコンダクター養成講座を受講した方/認定アートコンダクター/アーツアライブ正会員
・アーツアライブ正会員は毎月2 回の練習会に参加可能

◎アートコンダクターについての今後の検討事項
誰がアートコンダクターをするか
・アートコンダクター養成講座の初級講座を受講した学芸員
→初級+作品選定、テーマ設定、順番などのノウハウなどの要素が必要
・アートコンダクター養成講座の初級・中級を受講し認定を受けた美術館解説ボランティア →ボランティアでも毎回異なる人が担当するのは問題(経験が重要)

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